2010年07月07日

Bar夜話1


 はじまり

あたしもこんな小さな店を始めて結構な時間が経った
もともとに人付き合いの好い方ではない
やたらに意識しすぎて他人との距離感が計り辛くなった挙句に疎遠になる  
子供の時など特にそうだった
外で友人達と遊ぶよりも一人で物思いに耽るのが好きだった
ウメズかずおや水木しげるの怪奇漫画にはまった
寝食を忘れて没頭した時期がある
薄気味悪い読み物を集めては一人部屋で読み漁った
近所の友達と漫画の交換会をしても独りの方がよかった
人の集まりが億劫で仕方がなかった
出来れば誰とも会いたくなかった
今で言う引きこもりのさきがけだったのかも知れない
法事などは最高に苦痛だった
酒に酔っ払った大人達に囲まれると妖怪変化どもに取り付かれた気分になる
同じ年恰好のいとこ達と遊ぶよりも一人にして欲しかった
そんなあたしが酒場を生業にするなど神様もおかしなものだ

20年以上も人と向き合う仕事をしてると色んな事があり
時代の流れを否でも実感させれられる事が増えた
あの気持ちの悪い漫画家だった水木しげるが国民放送の連続朝ドラに
取り上げられる時代になったのだから世の中も変わったものだ

あれはいつ頃だったろう・・
もう10年 
いや、それ以上になるだろうか?
何年経とうが忘れられない出来事のひとつやふたつは誰でもにあろう


「じゃあ、今度のお店の休みの日、本当に付き合ってもらえるんですね?」
 
「えぇ、いいですよ。」


夜更けのBARのカウンターで女性客と向き合っていた。
薄暗い店内は彼女と二人きりだった

その女性客I嬢はその当時の常連客で、週2・3度は顔を出してくれていた
お客には賞味期限があって3ヶ月からよくて何年か
今では一回こっきりの野次馬がほとんどだが野次馬とお客は違う
しかし、その本人さんのマイブームが去ってしまえば途端に来なくなる
特に女性客はそうだ
こればかりはどうしようもない
そんなものと割り切っていくしかない
こちらが執着をもったところでどうなるものでもない
いくら努力しても抗えないがあるのだ

そのI嬢はよく続いて来てくれていた
もう何年も継続し訪れてくれているありがたいお客さんだ
地元の雑誌社で編集記者、キャリアウーマンだ。

色んな地元でのトピックスや新店舗の広告などの取材で精力的に
飛び廻り、その合間を合い潜って来てくれている大事なお客さんだ。
根っからの行動派で社内での信頼も厚いらしい。
  
せわしい仕事はせわしい人に頼めの諺も彼女を見ていると頷ける。


今度、車でここから南に走った所にある観光地H町での日帰り取材だそうだ。
今では高速道路も出来てあっという間に到着出来るが
その頃は一車線の国道をかったるく何時間もかけて走ったものだ

もし何も用事がなければ?と同行を誘われた。
別に色っぽい誘いでも何でもなく道中が退屈なだけで
深い意味はまったくなさそうで隣で話し相手がいないと眠くて仕方がないらしい。
ようするに単なる眠気覚まし要因って事だ。

他に特別な用事があるわけでもなく、隣でぼぉと景色を眺めているのも
気分転換になりそうだしH町も久し振りで悪くない。
全国的に有名な温泉地で年中観光客が途絶える事がない。
シーズン中ならどこも一杯になり国道も渋滞でえらい目にあうが
真冬の今の季節は比較的閑散としている・・

 
そうか、あれは真冬だったんだ・・ピカボス

Bar夜話1



Posted by pikabosu at 14:16│Comments(0)
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