2009年12月10日
ロザリータ アーカイブス20 ラスト


平成元年の今日12月10日
『ロザリータ』はオープンした
1年、1年と重ねていくうちに22年目にはいる
店をひとりの娘に置き換えればいつ嫁にだしてもおかしくない年頃になった
まさかこんなに続くとは思わなかったが自分自身の分身は潰しようもない
かつての様に肩肘を張る気ももうなくなった
偶像を求めるお客さんはいつまでもお互いに偶像でしかない
隠し様のない本物ゆえの強さはもろさにも通じる
こだわりの逸品を気取るよりも確かなものを目指そう
本物の珈琲や酒の遊びの世界で漂える年代にようやくなれた気がする
だが、これからの何もかもの可能性までもあきらめた訳ではない
以前に比べれば少しは肩の荷を下ろせたのと
心のドアを大きく開けられたようだ
来るもの拒まず去るもの追わず
あれからの5年間は大きな変化もなかったが
お客さんの目減りはどうしようもない
開店当初の人達はどこに行ったのだろう?
当時にまだ若かった人達は同世代か若い店を求めて去ったのだろうか
あの頃に大人に見えた達はどこに立ち消えたのだろう?
どちらも今ならもっと解かり合える気がする
こうして振り返ると20年は確かに長かった
大きなバイオリズムと小さなバイオリズムの連続
目を閉じれば店での色々なエピソードが昨夜の事の様によみがえる
もうこんな店などやめてしまおうと何度も落ち込み涙した事がある
後がなくどこにも行くあてがない真っ暗な迷宮のようなトンネルに迷い込んだ感覚
しかし現役でまだバッターボックスに立てれる自分自身の境遇を振り返れば
いつまでも忘れずに気にかけ訪れてくれる古くからのお客さん達と
期待をかけドアを開け入って来てくれる新しいお客さん達に
支えられ続けているんだと改めて実感する
バブル時代に始めデフレ時代の大不景気になっていた
こんなに何もかもカネカネと心をないがしろ置き去りに
する世の中になるなど思いもよらなかった
商売に限らずに人の仁義などお構いなしの時節だ
若い頃にはドコ吹く風だった人と人との情味を今になり焦がれる
バーやカフェって一体なんだろうか?
心がなければただの虚しい空間ではないか
ホンの一杯の珈琲や酒
同じ空間に憩う同士の通い合い
値段や小手先の次元の低い競い合いだけで一番に大事なものを
こそげ落としていく風潮で一体何が残るというのか
心の結びつきや癒しなどと世間では言うが
相手を思いやれる心が軽んじられ
ただの取引だけになりつつあるサービス業
まだこの仕事を続けられる要因はそうではないと
突きつけたい思い入れかも知れない
節目とはよく言ったものでこの師走に大きな決心した
22年間ずっと苦楽をともにしてきたバイクを降りる決意だ
静かな決心だ
正直言えば、自分自身の一部をもがれる思いがする
無数に刻まれた過去の思い出をわざわざにおっぽり出す
これもただ無常と飲み込むしかない
何かを得ようとすれば何かを捨て去らなければならない
次から次に足して足しての自分の時代はすでに過ぎ去って
削ぎ落とさねば前に進めない事を知る
バーテンダーを営んでいるすべての同輩やバーを愛するみなさんに
入り口のドアと一緒に心も開きましょうよ、
人生とはそんな捨てたものではない
ロザリータはドアを開け今日も待っている ラスト・・ピカボス
Posted by pikabosu at 15:21│Comments(0)